[PDF] 慢性心不全治療薬としての SGLT-2 阻害薬について


前述したとおり、ジャディアンスは2型糖尿病・慢性心不全・慢性腎臓病の3つの疾患の患者さまが対象です。しかし、末期腎不全や透析を受けている方では、同薬による腎保護の作用が十分に得られない可能性があり、投薬対象とならない場合があります。


SGLT-2 阻害薬のフォシーガ錠が 2020 年に慢性心不全の効能が追加承認され、翌年にジ

心臓と腎臓が影響を及ぼし合って互いの機能を低下させる「心腎連関」。糖尿病治療薬として開発されたSGLT2阻害薬が、心不全や腎臓病に対する有効性を示し、治療に新たな展開が訪れています。国内では昨年11月、アストラゼネカの「フォシーガ」が慢性心不全の適応を取得し、12月には慢性腎臓病への適応拡大を申請。日本ベーリンガーインゲルハイムの「ジャディアンス」も慢性心不全への適応拡大を申請中で、慢性腎臓病でも開発の最終段階に入っています。

「心腎連関」とは、心機能の低下と腎機能の低下が影響を及ぼし合う現象のことです。心臓と腎臓は密接に関連しており、心疾患で心臓の機能が落ちると腎臓の働きが悪くなることがありますし、逆に、腎疾患で腎臓の働きが悪くなると、その影響で心臓の機能が低下することがあります。心不全患者の生命予後は腎機能に大きく左右されることが知られており、慢性腎臓病の患者では心血管疾患のリスクが高まることもわかっています。

図1は、慢性心不全に対するダパグリフロジン(商品名フォシーガ)の ..

心不全も腎不全も薬物治療の中心は降圧薬ですが、近年、心臓と腎臓の両方に対する臓器保護作用を持つ薬剤として注目されているのがSGLT2阻害薬です。

ジャディアンスの投薬対象者は、主に2型糖尿病の患者さまであり、食事療法や運動療法だけでは血糖コントロールが不十分な場合に使用されます。さらに、慢性心不全や慢性腎臓病を持つ患者さまにおいても、その治療の一環として処方される場合があります。

国内では昨年11月、アストラゼネカの「フォシーガ」が慢性心不全の ..

国内では、▽「フォシーガ」(一般名・ダパグリフロジンプロピレングリコール、アストラゼネカ)▽「ジャディアンス」(エンパグリフロジン、日本ベーリンガーインゲルハイム)▽「カナグル」(カナグリフロジン水和物、田辺三菱製薬)――の3つのSGLT2阻害薬が、心不全と腎臓病を対象とした開発を行っています(カナグルは糖尿病性腎症のみ)。

慢性心不全では昨年11月、フォシーガがこのクラスの薬剤として初めて承認を取得し、ジャディアンスも適応拡大を申請。慢性腎臓病では、フォシーガが昨年12月に申請を済ませ、ジャディアンスも臨床第3相(P3)試験を行っています。カナグルは糖尿病性腎症を対象にP3試験を実施中です。

[PDF] 心不全患者における SGLT2 阻害薬の安全性に関する調査 研究

フォシーガは、左室駆出率が低下した心不全(HErEF)の患者を対象に行ったP3試験「DAPA-HF試験」で、標準治療への上乗せで主要複合エンドポイント(心不全の悪化/心血管死)をプラセボに比べて26%低下。慢性腎臓病患者を対象とした同「DAPA-CKD」でも、主要複合エンドポイント(腎機能の悪化/心血管死または腎不全による死亡)を39%抑制しました。いずれも、2型糖尿病の有無に関わらず有効性が示されており、「心・腎保護薬」としての期待が高まっています。

また、ジャディアンスは2型糖尿病に適応のある薬剤であり、1型糖尿病の方は使用できません。なお、慢性心不全や慢性腎臓病を有する1型糖尿病の患者さまが同薬を使用した場合、ケトアシドーシスの発生に注意が必要です。


慢性心不全、慢性腎臓病の3つの適応症を有するジャディアンスとは?

昨年、SGLT2阻害薬として初めて慢性心不全での承認を取得し、慢性腎臓病への適応拡大を申請した「フォシーガ」。同薬を開発したアストラゼネカの緒方史子氏(執行役員 循環器・腎・代謝/消化器事業本部長)と矢島利高氏(メディカル本部 循環器・腎・代謝/消化器疾患領域統括部 統括部長)に、その意義や心・腎領域の事業戦略について聞きました。

心不全に対するSGLT2阻害薬の使い方についてまとめてみた 2023.12

さらに、ジャディアンスには利尿作用もあることから体の不要な水分を排出し、血圧を低下させる効果も期待されています。この点から、慢性心不全の患者さまにおいても使用される場合がある薬です。実際、糖尿病を有しているか否かに関わらず、心不全患者さまにジャディアスを投与することで、心臓病による死亡率や心不全による入院リスクを低下させることが報告されています。

エンパグリフロジン(ジャディアンスR)は、心不全患者さんにおける心臓や血管に関連する病気による死亡や入院のリスクを20~30%減らします。

初めてこの薬のエビデンスが出たのが「EMPA-REG OUTCOME試験;ジャディアンスという薬によるもの」でした。
それは心血管疾患の既往のある2型糖尿病患者さん約7000名を対象として行われ、たった2-3年の間に、特に心血管疾患による死亡が約4割も減少した、という驚くべきものでした。
とりわけ心不全による入院が35%低下し、この薬の利尿作用がどうやら他の利尿剤と異なって、塩分も少し尿中に余分に捨てる働きがあるにもかかわらず、塩分の再吸収を増やすシステムにスイッチをいれないからのようです。
次に「CANVAS-PROGRAM試験(カナグルという薬)」。
こちらの試験でも心血管疾患リスクの高い糖尿病患者さんが対象で似たようなエビデンスが示されました。さらに「DECLARE-TIMI試験(フォシーガという薬)」。
この試験でも対象は動脈硬化性心血管疾患リスクの高い患者さんで、やはり心血管死または心不全による入院を減少させました。
これらのエビデンスにより「心血管イベントを抑制する」という効果はSGLT2阻害剤が共通して持っている働きである可能性が強く示唆されました。
糖尿病患者さんが長生きできる時代がやってきて、加齢に伴う心不全が重要なテーマになってきている現在、かなり優先的に使用されるべき薬剤として、特に循環器の先生方のSGLT2阻害剤に対する注目度・期待度が高まっています。

ジャディアンス®錠10mg・25mg; SGLT2阻害薬による心不全治療における患者 ..

また、今年「CREDENCE試験(これもカナグルという薬)」という論文が発表されました。
これはSGLT2阻害剤の腎臓への保護作用についてエビデンスを出したものです。
この試験では、すでに腎機能がある程度低下した患者さんも含む対象で、SGLT2阻害剤を内服した群では腎不全や腎臓死などのイベントを、偽薬群に比べて30%減少させています。
ある程度腎臓を守る働きは予想されていましたが、それがはっきりと示されたのは今回が初めてです。
おそらく、この腎臓保護作用もSGLT2阻害剤が共通して有するものだろうと考えられます。
SGLT2阻害剤のデメリットも挙げておきましょう。
当初危惧された膀胱炎、尿路感染症は必ずしも増加しなかったものの、女性では性器感染症が増加しやすい、ということです。
それから、筋肉量の少ないやせた方には、たとえ心不全傾向でも使用しにくい、といったことでしょうか。

[PDF] SGLT2阻害薬が心不全での適応追加になりました! 薬剤師大谷

緒方:アンメットニーズのある領域に対し、既存薬とはまったく作用機序の異なる治療選択肢を提供できるという点で、大変意義のある適応拡大だと思っています。P3試験の結果を見ると、糖尿病の有無に関わらず、どの心不全治療薬と併用してもきちんと有効性を示していますので、多くの患者さんに使っていただける薬剤です。循環器の医師からの反響も大きく、「ぜひ使いたい」という言葉をたくさんいただいています。

CKD患者は心不全を合併していることも少なくなく,Sglt2阻害薬は心不

矢島:腎不全の患者は、心臓が悪くなればなるほど心血管死や腎不全による死亡が増えるし、逆に心不全が悪くなれば腎臓も悪くなるので、これらは1つの疾患群と捉えていいと思うんです。フォシーガはそれらに対して総合的に効果を示せるようなので、臨床現場で有用に使っていただけるのではないかと期待しています。

[PDF] ジャディアンス錠 10mg 適正使用のお願い (慢性心不全※)

緒方:アストラゼネカにとって、循環器・腎・代謝という領域は重要な位置付けで、グローバルで見ても成長ドライバーになっています。互いに密接に関連している疾患だということを踏まえて、主に代謝、心不全、慢性腎臓病、この辺りの薬剤をしっかりと提供することで、疾患の進展抑制、臓器保護、予後改善を目指すという考えでポートフォリオを組んでいます。

心不全にエンパグリフロジン(ジャディアンスR)は効果がありますか? 薬 : ダパグリフロジン(フォシーガR)について

矢島:われわれが日本、英国、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの6カ国で約77万人の2型糖尿病患者を対象に行ったリアルワールド研究では、2型糖尿病患者が最初に発症する心血管・腎疾患は慢性腎臓病が最多で、次に心不全が多いことがわかりました。心機能や腎機能を悪化させないため、糖尿病を早期に治療することは非常に重要です。そこはSGLT2阻害薬がすごく役に立てるところですし、心不全や慢性腎臓病を発症した患者についても、心腎連関を意識しながらトータルでケアすることができる。フォシーガは、早期の段階から心不全や腎臓病を発症する後期の段階まで、幅広く患者の役に立てる薬剤として成長させていきたいと思っています。

糖尿病・慢性心不全治療薬 エンパグリフロジン(ジャディアンス)

前述のようにジャディアンスは2024年2月9日付で、日本ベーリンガーインゲルハイム社が慢性腎臓病に係る医薬品製造販売承認事項の一部変更・承認を厚生労働省より取得したため、慢性腎臓病の患者さまにも使用可能となりました。

糖尿病・慢性心不全治療薬 エンパグリフロジン(ジャディアンス) ..

被験者は、エンパグリフロジン10mg投与群、もしくはプラセボ投与群にランダムに振り分けられ、腎臓病の進行〔末期腎不全,推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate:eGFR)の10mL/分/1.73m2未満への持続低下、eGFRの40%以上の持続低下、腎死亡〕および、心臓病による死亡が比較されました

東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科では、糖尿病や心不全のために SGLT2 阻害薬

ジャディアンスは、SGLT2(ナトリウム-グルコース共輸送体2)阻害薬です。糖尿病治療薬として開発された同薬ですが、2021年に慢性心不全に対する効能・効果の追加承認を取得しています。さらに、冒頭でもご紹介したように、2024年2月9日付で慢性腎臓病に対する効能・効果の追加承認を取得しました。

SGLT2阻害薬は糖尿病薬から心不全治療薬に進化した(解説:絹川弘一郎氏)-1125.

そんなSGLT2阻害薬に心不全を改善する心保護作用があるということが、近年、言われてきています。当院でも心不全の患者様に対し、SGLT2阻害薬を使用する機会が増えました。