局所麻酔薬の特性と末梢神経ブロックにおける効果持続時間延長のための手段 ..
今回は,腕神経叢ブロック時に投与する局所麻酔薬にステロイドを添加することで作用が延長する効果について紹介する。本稿のようにステロイドを加えることで,単回の腕神経叢ブロックの効果を延長させることができる。これまで深夜にブロック効果が切れていたものが翌朝まで効果が得られることになり,臨床上の有用性は高い。一方で,その作用機序は明らかではなく,神経障害など副作用が生じる危険性もある。筆者の施設では,ステロイドは全身投与に留め,局所麻酔薬への添加は行っていない。適応外使用であることも含め,本稿の内容を臨床で応用する際には,リスクとベネフィットについてよく検討していただきたい
麻酔 2017年3月号【特集】末梢神経ブロックの将来 | 克誠堂出版
局所麻酔薬の使用量が多くなるため、他の局所麻酔法に比べ中毒の発生に注意しなければなりません。薬の極量の把握はもちろんのこと、皆さんが医師に薬液注入を頼まれた場合、血管内注入を避けるため必ず注入前ごとに血液が引けないか吸引確認し、その旨を医師に伝えてから毎回注入しましょう。術後回復室で急に興奮しだしたり、口唇の痺れの訴えが出たら、即座に局所麻酔薬中毒を疑うくらい警戒して接していきたいものです。四肢のブロック後、多くの場合には痺れや感覚鈍麻、筋力低下が残っている状態で手術室から病棟に申し送ることになります。麻酔以外にも手術操作やターニケット(四肢を血圧の2倍以上の圧で駆血して出血しない状態で手術を行えるようにする器具)による影響かもしれませんが、術後経過を慎重に見ていくよう継続看護の視点は重要です。
施行時は清潔野の医師の指示でエコーや神経刺激装置の操作、局所麻酔薬の注入など依頼されることがあるかもしれません。末梢神経ブロックの効果や合併症の知識に加え、処置自体の勉強もある程度行っておくといざというときに安全かつスムーズな介助が可能になります。処置中は、エコー画面や処置に医師は集中しているため、患者さんの監視は看護師に委ねられます。基本的に患者さんは意識がある状態ですので、処置の状況や今後の流れなどを説明しながら不安軽減に努め、会話の中で意識状態や表情の変化など局所麻酔薬中毒の初期症状にも注意しながら看視をします。医師も処置をしながら患者さんの感覚異常の有無を確認しますが、何かあれば伝えてもらうよう事前に患者さんに説明しておきましょう。
段の一つが末梢神経ブロック(peripheral nerve block; 以下
日本語
ステロイド添加が股関節骨折手術における神経ブロックの鎮痛効果に及ぼす影響についての研究
・・・針による直接的な神経損傷や薬剤性障害は稀に起こりえます。数日から数週間、感覚鈍麻や痺れが残ることもあります。1/1000例程度。
[PDF] 末梢神経ブロック (PNB)後のリバウンドペインとは
ブロックされる領域が限定されるため基本的に循環や呼吸への影響はありません。腕神経叢ブロック(特に斜角筋間アプローチ)ではブロック側の横隔神経麻痺は必発しますので高齢者や呼吸状態の悪い患者さんでは注意が必要です。
エコーガイドで下中腋窩線上にアプローチ。第10胸髄から第1腰髄神経領域までの鎮痛効果が得られるため下腹部手術に適しています。図より背中側からの穿刺法(後方アプローチ、腰方形筋ブロック)では第7胸髄レベルまで広がるため臍上から下腹部までの鎮痛効果が得られ、効果持続時間も長くなると言われています。
針は皮膚、皮下、外腹斜筋を通り、内腹斜筋と腹横筋膜の間に薬液注入します(図3)。
(3) 末梢神経ブロック(腕神経叢ブロックや大腿神経ブロックなど ..
四肢のブロックの例として腕神経叢ブロック(図1)、体幹ブロックは腹横筋膜面ブロック(図2)を例示します。
ロピバカインを用いた小児への腕神経叢ブロック(brachial plexus block:BPB)において、デキサメタゾンによる鎮痛時間および運動機能抑制時間への影響を検討した。全身麻酔下に上肢の手術を受ける小児を対象とし、BPBでは対照群(対照群:0.5%ロピバカイン0.4ml・kg-1と生理食塩液0.045ml・kg-1)およびデキサメタゾン群(Dex群:0.5%ロピバカイン0.4ml・kg-1とデキサメタゾン0.1485mg・kg-1)の2群に無作為に分類した。Dex群の鎮痛時間は1,125±125分と対照群649±118分と比べて有意に延長したが、運動機能抑制時間に延長は見られなかった。
デキサメタゾン(仙骨硬膜外腔,神経周囲,静脈内投与)は局所麻酔薬の仙骨硬膜外ブロック(N)
事前にブロック針には延長チューブと局所麻酔薬を吸ったシリンジを繋いでおきます。ブロック針は針先が鈍になっており、直接神経を障害しないようになっています。また、四肢の神経の同定を容易にするため、電気刺激を行う場合は電気刺激専用のブロック針と神経刺激装置が必要になります。
神経障害性疼痛は,中枢神経系・末梢神経系の障害によって引き起こされる。 ..
患者さんのブロックする側の体側に施行者(医師)が立ち、患者さんを挟んで反対側にエコー本体を配置します。エコーで目的とする神経を描出し穿刺のイメージを行った後、ブロックの皮膚穿刺部位と周辺を消毒し滅菌布をかけます。
ているが、局所鎮痛法 (末梢神経ブロック、LIA) に対する優位性
小児の特発性脊柱側彎症手術におけるデキサメタゾンの術後悪心・嘔吐予防効果 関 博志ほか
➀末梢神経脱髄の有無は伝導遅延(伝導速度低下,遠位潜時延長,F 波潜時延長,時間
末梢神経ブロック処置時の感覚異常のサインと神経損傷の関係性が高いことがわかっているため、処置中に患者さんの感覚異常に気づけるよう意識下もしくは軽度の鎮静下で行われます。穿刺方法には解剖学的ランドマーク法(目印となる骨や動脈、筋肉等を触知して探す方法)、電気刺激法、エコーガイド法などがあります。エコーガイド法ではブロックの成功率や鎮痛効果が上がり、処置時間が短縮すると言われています。
的分散)と伝導ブロックの存在をもって判断される.1991 年の米国神経学会
末梢神経ブロックには実はさまざまな方法があります。痛みの緩和、交感神経ブロックによる血流改善のために行うなど、手術以外にペインクリニック領域でも行われます。手術時は局所麻酔薬を使用しますが、慢性痛に対する治療では熱凝固法や神経破壊薬なども使われます。ペインクリニックでは、胸背部の帯状疱疹後神経痛や肋間神経痛では肋間神経ブロック、肩関節周囲炎では腕神経叢ブロック、顔面神経麻痺に対する星状神経節ブロックなどが行われます。手術麻酔では、上肢や肩の手術では腕神経叢ブロック、下肢の手術では大腿神経ブロックや坐骨神経ブロック、腹部には腹横筋膜面ブロックや腰方形筋ブロック、腹直筋鞘ブロック、胸部では肋間神経ブロックやPECSブロックなどさまざまな方法が行われています。また、経尿道的膀胱切除術(TUR-Bt)では術中の電気刺激による大腿の内転を防ぐために脊髄くも膜下麻酔の上、閉鎖神経ブロックを追加することがあります(この場合鎮痛目的ではなく運動神経麻痺による不動目的)。
末梢神経炎(ギランバレー症候群を含む) [*静脈内注射、*点滴静脈内注射 ..
末梢神経周囲に局所麻酔薬を投与する麻酔法で、伝達麻酔とも呼ばれます。脊柱管内の脊髄から出た脊髄神経(末梢神経)は四肢や体幹に枝分かれしていきます。手術部位に合わせた神経支配を考慮し、目的とする末梢神経本幹や神経叢(解剖学的に名前の付いた太い神経やその束)の周囲に行います。局所浸潤麻酔と異なり、ブロックされた神経より末端の神経支配領域全域が麻痺するため、より確実で強力な鎮痛方法と言えます。ブロック範囲は最低限に留められるため基本的に呼吸や循環への影響はなく、運動機能制限も限定的です。また抗凝固薬や抗血小板薬を服用していても施行可能な点(傍脊椎や腹腔神経叢などの体内深部を除く)が硬膜外麻酔や脊髄くも膜下麻酔と異なります。上肢の手術ではブロック単独で行われることもありますが、複数のブロックを組み合わせたり、全身麻酔と併用されることは少なくありません。
また末梢神経終末には、47℃以上の熱刺激や15℃以下の冷刺激、pH 6以下、トウガラシ ..
第66巻第3号(2017年3月号)
巻頭言
手術室における医療安全と麻酔科医の役割 近江明文 231
特集:末梢神経ブロックの将来
緒言とまとめ 川真田樹人 232
末梢神経ブロックの歴史と将来 横山正尚 235
上肢の末梢神経ブロックの現状と将来 堀田訓久ほか 241
体幹(胸部)の末梢神経ブロックの現状と将来 原かおるほか 247
体幹(腹部)の末梢神経ブロックの現状と将来 新屋苑恵ほか 255
下肢の末梢神経ブロックの現状と将来 北山眞任ほか 263
医療経済から見た末梢神経ブロックの将来 益田律子ほか 274
臨床経験
LMAスプリーム(TM)を用いた陽圧換気において胃管挿入は術後悪心・嘔吐の頻度を減少させない 紀本 学ほか 283
食道がんに対する腹臥位胸腔鏡下食道亜全摘と開胸手術の周術期予後の比較―後ろ向き観察研究― 森 玲央那ほか 287
胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術に対するデクスメデトミジンとフェンタニルの比較 吉村 学ほか 291
小児の特発性脊柱側彎症手術におけるデキサメタゾンの術後悪心・嘔吐予防効果 関 博志ほか 298
短報
high flow nasal cannulaが奏効した筋緊張性ジストロフィー患者の1症例 野口智子ほか 303
開心術後にトラネキサム酸が原因と考えられる痙攣を発症した透析患者の2症例 河島愛莉奈ほか 306
褐色細胞腫を合併した狭心症患者のオフポンプ冠動脈バイパス術の麻酔経験 妙中浩紀ほか 309
胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術後に発症したmirror syndromeの1症例 吉村 学ほか 313
97歳の急性A型大動脈解離破裂の周術期管理 甲斐沼 篤ほか 316
ブピバカインを用いた脊髄くも膜下麻酔で安全な麻酔管理が行えた骨髄性プロトポルフィリン症患者の1症例 土屋裕子ほか 320
紹介
Aintree Intubation Catheter(R)とチューブエクスチェンジャーを併用した気管チューブ交換 木村哲朗ほか 322
気管挿管の歴史:3.心肺蘇生での使用(1) 浅井 隆 327
蘇生の歴史1:18世紀の蘇生法の発達(1)―蘇生協会の成立と文献― 浅井 隆 338
蘇生の歴史2:18世紀の蘇生法の発達(2)―蘇生法の発達の経緯と救助法― 浅井 隆 350
1 末梢神経ブロックに際し,超音波ガイドと神経刺激装置はどちらが有用か ..
日本語
デキサメタゾン局所添加が大腿骨近位部骨折手術における腸骨筋膜下ブロックの鎮痛効果に及ぼす影響についての二重盲検ランダム化並行群間比較試験
4 TKAの術後鎮痛において,リポソームブピバカインを用いた大腿神経ブロックは有用か?
PICO
P 足あるいは足首の手術で坐骨(膝窩)神経ブロックと伏在神経ブロックを施行される患者
I デキサメタゾンとデクスメデトミジンの静注併用or デキサメタゾンのみ静注
C プラセボ(生理食塩水)静注
O 鎮痛持続時間(ブロックしてから手術部位に初めて痛みを感じるまで)
Abstract
背景
デキサメタゾンとデクスメデトミジンはどちらも神経ブロックの鎮痛持続時間を増加させる。そこで、デキサメタゾンとデクスメデトミジンの静注を併用することで、デキサメタゾンのみ静注およびプラセボ静注と比較して、鎮痛持続時間が延長するという仮説を検証した
方法
全身麻酔で足あるいは足首の手術を受け、坐骨(膝窩)神経ブロックと伏在神経ブロックを施行される患者を、デキサメタゾン12mgとデクスメデトミジン1μg/kg静注併用群、デキサメタゾン12mg静注群、プラセボ(生理食塩水)静注群の3群に無作為に割り付けた。Primary outcomeは鎮痛持続時間であり、ブロック施行から患者が手術部位に初めて痛みを感じるまでの時間とした。鎮痛持続時間の33%の増加を、臨床的に有意差ありと定義した。
結果
2施設から合計120人の患者がランダム化され、Primary outcomeについて119人が解析された。鎮痛持続時間の中央値[四分位範囲]は、デキサメタゾンとデクスメデトミジン併用群で1572分[1259~1715]、デキサメタゾン単独群で1400分[1133~1750]、プラセボ群で870分[748~1138]であった。プラセボ群と比較して、デキサメタゾンとデクスメデトミジン併用群(差:564分、98.33%CI:301~794、P
結論
足あるいは足首の手術を受ける患者において、デキサメタゾンは、デクスメデトミジンの有無にかかわらず、坐骨神経ブロックと伏在神経ブロックの鎮痛持続時間を延長させた。デキサメタゾンにデクスメデトミジンを併用しても、デキサメタゾンのみの静注と比べ、鎮痛持続時間は延長しなかった。
末梢神経炎(ギランバレー症候群を含む)〔§静注、§点滴、§筋注〕、重症筋 ..
重篤な有害事象5件が3つの研究で報告されていた。神経周囲に投与したデキサメタゾンとプラセボを比較した試験の1件では、患者1人に神経ブロック関連の有害事象(気胸または肺虚脱)が発生したが、この患者がどちらに割り付けられていたかは報告されていなかった。その他の有害事象は神経ブロックと関連がなく、デキサメタゾンの神経周囲投与と静脈内投与、およびプラセボを比較した2件の試験で発生した。プラセボ群の患者2人が術後1週間以内に入院を必要としており、1人は転倒によるもの、もう1人は腸管感染症によるものであった。プラセボ群の患者1人が複合性局所疼痛症候群(CRPS)と呼ばれる慢性疼痛症候群を発症し、デキサメタゾン静脈内投与群では1人が肺炎を発症した。安全性の問題に関するエビデンスの質は非常に低かった。
末梢神経および脊髄・ 脳の中枢神経のさまざまな部位に損傷(切断,圧迫,炎症, 変性) ..
手術後12時間の時点での痛みの強さは、プラセボ群と比較してデキサメタゾン神経周囲投与群で低く(5研究、患者257人、非常に質の低いエビデンス)、手術後24時間時点でも同様であった(9研究、患者469人、質の低いエビデンス)。デキサメタゾン静脈内投与群とプラセボ群を比較したところ、手術後12時間の時点(3研究、患者162人、質の低いエビデンス)と24時間の時点(5研究、患者257人、質の低いエビデンス)のいずれも、デキサメタゾン静脈内投与群のほうがプラセボ群よりも痛みの強さが低かった。使用したオピオイド系鎮痛薬の量も、神経周囲および静脈内にデキサメタゾン投与を受けた患者では少なかった。デキサメタゾンの神経周囲投与と静脈内投与の比較では、手術後の痛みの強さや使用したオピオイド系鎮痛薬の量に差はなかった。したがって、デキサメタゾンの投与方法のどちらか一方が痛みの軽減に優れているわけではないと結論付けた。
5) CRPS の ECT 治療 …米良仁志, 小林如乃, 土井永史 6) 末梢神経損傷に対する生体内再生治療 …
感覚神経ブロック持続時間は、プラセボ群と比較したところ、デキサメタゾンの神経周囲投与群で6時間半(27研究、患者1,625人、低い質のエビデンス)、デキサメタゾン静脈内投与群では6時間(8研究、患者499人、中等度の質のエビデンス)延長した。デキサメタゾンの神経周囲投与と静脈内投与を比較した場合、感覚神経ブロック持続時間は神経周囲投与群のほうが3時間長かった(9研究、患者720人、中等度の質のエビデンス)。